剣山系の農文化(世界農業遺産・日本農業遺産)
剣山系の伝統的な古代刈敷農業
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水田に草を敷き込む農具「大足」(池上曽根遺跡)
・剣山系では、[カヤ](ススキ)を主とした有機物を大量に施用する伝統農業が、化学肥料を投入する近代農業が席巻する現在でも、広範囲な地域で大規模に続けられている。日本では、山の草木を刈り取り、水田や畑に踏み込み肥料とする農業は、弥生期には開始され、[刈敷]と呼ばれた。剣山系の[刈敷]の特徴は、大量に[カヤ]を用いる点にあり、その伝統農法が継続されている由縁は、豊富な日照量、降水量、温暖な気候によるカヤの成長力・再生力の高さにある。
中でも重要なポイントは、堅い茎をもつカヤをも一冬で発酵させ分解させる温暖多雨な気候にある。いわば、剣山系の伝統農業は、弥生時代以来の古代刈敷農業である。剣山系の古代刈敷農業の効果と意味は、次のように整理できる。
①傾斜畑にカヤを敷くことで、土壌流失を防ぐことができる。
②カヤで傾斜畑の耕土表面を覆えば雑草を抑えることができる。これは現代のマルチ農業の原点というべき技術となる。
③カヤを漉き込まず、地表面に覆うように敷いて表面堆肥にする。施肥としては最大効果をもつ。表面堆肥こそが、現代における最高の有機農業技術となる。
④カヤで耕土の表面を覆えば、カヤと耕土との間は温度・湿度が高く、発酵状態となり、作物の成長に有用なミミズ・小虫・微生物などの宝庫となり、地下の生物多様性が保障される。傾斜度があること(排水性)、小石(遠赤効果、多孔質、空気が入る)の存在が発酵技術の原点で、それは耕土を腐らせない技術でもある。
⑤カヤを耕土に敷けば、地面に保水力をもたせることができる。
⑥カヤを傾斜畑の表面に敷けば、夏は土壌の温度を効果的に下げ、冬は保温の役目を果たした。また、耕土への直射日光を防ぐことができる。つまり、土焼け防止効果である。
⑦カヤを耕土に漉き込むことで土壌流出を防止する一途となる。
⑧カヤはケイ酸などを多量に含み、持続的に耕土に漉き込めば、良質の有機堆肥となる。
⑨[カヤ場の意義]カヤが生える[肥場]を維持することは、大気中の二酸化炭素の固定化につながり、炭素を蓄積する機能を担った。カヤ場を維持することで、山野草・山菜・薬草・昆虫類などの宝庫となった。
・剣山系の傾斜地農業は、焼畑農耕時代からの発展的な継承技術で、カヤを毎年刈り、繰り返し再生させ、施肥や屋根材に使用し、農作物や山菜を収穫するという古代からの知恵を受け継いだ自然循環を切らない持続型の伝統農業なのである。また、カヤ場(採草地)の管理システムが、生物多様性を保障し、傾斜畑に有機物を投入することで、土壌の持続的な生成がなされ、しかも「地下の生物多様性」を保障している。剣山系のカヤ等を施用する多様な有機物利用農業の伝統技術や知恵は、世界的に貴重な知識体系として、保存・維持・継承されなければならない
中でも重要なポイントは、堅い茎をもつカヤをも一冬で発酵させ分解させる温暖多雨な気候にある。いわば、剣山系の伝統農業は、弥生時代以来の古代刈敷農業である。剣山系の古代刈敷農業の効果と意味は、次のように整理できる。
①傾斜畑にカヤを敷くことで、土壌流失を防ぐことができる。
②カヤで傾斜畑の耕土表面を覆えば雑草を抑えることができる。これは現代のマルチ農業の原点というべき技術となる。
③カヤを漉き込まず、地表面に覆うように敷いて表面堆肥にする。施肥としては最大効果をもつ。表面堆肥こそが、現代における最高の有機農業技術となる。
④カヤで耕土の表面を覆えば、カヤと耕土との間は温度・湿度が高く、発酵状態となり、作物の成長に有用なミミズ・小虫・微生物などの宝庫となり、地下の生物多様性が保障される。傾斜度があること(排水性)、小石(遠赤効果、多孔質、空気が入る)の存在が発酵技術の原点で、それは耕土を腐らせない技術でもある。
⑤カヤを耕土に敷けば、地面に保水力をもたせることができる。
⑥カヤを傾斜畑の表面に敷けば、夏は土壌の温度を効果的に下げ、冬は保温の役目を果たした。また、耕土への直射日光を防ぐことができる。つまり、土焼け防止効果である。
⑦カヤを耕土に漉き込むことで土壌流出を防止する一途となる。
⑧カヤはケイ酸などを多量に含み、持続的に耕土に漉き込めば、良質の有機堆肥となる。
⑨[カヤ場の意義]カヤが生える[肥場]を維持することは、大気中の二酸化炭素の固定化につながり、炭素を蓄積する機能を担った。カヤ場を維持することで、山野草・山菜・薬草・昆虫類などの宝庫となった。
・剣山系の傾斜地農業は、焼畑農耕時代からの発展的な継承技術で、カヤを毎年刈り、繰り返し再生させ、施肥や屋根材に使用し、農作物や山菜を収穫するという古代からの知恵を受け継いだ自然循環を切らない持続型の伝統農業なのである。また、カヤ場(採草地)の管理システムが、生物多様性を保障し、傾斜畑に有機物を投入することで、土壌の持続的な生成がなされ、しかも「地下の生物多様性」を保障している。剣山系のカヤ等を施用する多様な有機物利用農業の伝統技術や知恵は、世界的に貴重な知識体系として、保存・維持・継承されなければならない
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カヤを入れることで土壌流出を防止する(つるぎ町一宇字大野)
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カヤで耕土を覆い雑草を抑える(美馬市穴吹町馬内)
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カヤ施肥の下は高温で湿気が高く、微生物や昆虫の宝庫
カヤは表面堆肥となる(穴吹町馬内)
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カヤを施用した土壌の下は、ミミズの宝庫(美馬市穴吹町西山)
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切カヤを入れた耕土、カヤはケイ酸を多量に含む
(美馬市穴吹町田方)
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カヤが傾斜面に表面堆肥として敷かれた様子
(美馬市穴吹町渕名)
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カヤが漉き込まれた耕土、カヤはケイ酸を多量に含む
(つるぎ町半田字蔭名)
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カヤと落葉を入れれば、有用菌が発生し作物の成長を促す
(美馬市穴吹町西山)
古代刈敷農業と多様な農作物の栽培
・カヤを採取するカヤ場(採草地)は、剣山系では伝統的に[肥場][肥野][肥山]と呼ばれ、古代からの用語が継承され、カヤ等を施用する農業が現在でも営まれている。カヤ場(採草地)を維持・管理・利用することこそが、傾斜地農業を成立させる基盤となる。カヤ場は、個人持や共有地として管理されている。カヤは、棚田・穀物・野菜・果樹・茶・山菜などの農作物の栽培に施用され、地勢や作物ごとにカヤ投入技術も異なるのが特徴となる。
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ニラ栽培に投入されるカヤ(美馬市穴吹町渕名)
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根菜類の栽培に投入される切カヤ8美馬市穴吹町渕名)
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傾斜地にカヤを大量に投入してアズキ・ダイズが栽培される
(つるぎ町一宇字広沢)
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カヤを大量に投入し、大根と白菜を栽培する
(つるぎ町一宇字広沢)
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ゼンマイ(山菜)栽培に投入されるカヤ(つるぎ町半田字上連)
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茶の栽培に投入されるカヤ・落葉(つるぎ町一宇字大野)
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近代的な雨除け技術と施用されるカヤでトマト・キュウリの
栽培(東みよし町西庄字五名)
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美馬市穴吹町馬内の全面切カヤ敷き、等高線農業でソバ栽培
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つるぎ町貞光字西谷の急傾斜畑の全面カヤ敷きでイモ栽培
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三好市東祖谷山字栗枝渡のカヤ敷きでヒエ、コキビ、
モロコシ、コンニャク栽培
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ソラ豆の栽培に施用されるカヤ(美馬市穴吹町中野宮)
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イモ栽培に投入されるカヤ(東みよし町西庄字五名)
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スダチ栽培に投入されるカヤ(佐那河内村)
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棚田に投入されるカヤ(佐那河内村府能)